忍法 隠れ身の術!
- 2017.09.19
- 大阪湾で出会った生き物たち
まず写真1を見て下さい。ゴミにしか見えないこのかたまりは、海遊館前の岸壁から水中に吊るしたロープについていたものです。
茶色のモヤモヤは、おそらく水中の細かな泥や有機物片などがくっついて出来たもので、ヒドロ虫やイソギンチャクも付着しているのがわかります(写真1矢印)。
さらにもう1種類、比較的大きな動物がこのかたまりの中にいるのがわかりますか?
▽写真1:多数の枝を出した糸状のものはヒドロ虫類
その動物とはヨツハモドキというモガニ科のカニです。写真2がそのカニだけを取り出したものです。
付着物を取りのぞいた写真3を見れば、すぐカニだとわかりますね。
▽写真2:体中に様々なものをくっつけているヨツハモドキ
▽写真3:写真2の個体から付着物をとりのぞいた状態
モガニ科やその近縁のカニたちの多くは、自分の回りにある様々なものを体にはえた専用の毛にくっつけ擬装します。これはデコレーティングという行動で、回りの環境に溶け込んで自分の姿を隠す効果があります。くっつける素材は、カニの種類や発育段階、生息環境などによって様々で、藻場では海藻をくっつける例が多いようです。海遊館前の岸壁には細かな泥や有機物片などが集合したいわゆる浮泥が多く付着しており、浮泥をキャッチして食べるカイメンやヒドロ虫、イソギンチャク、ホヤなどの付着生物も目立ちます。ヨツハモドキはこれらの素材を利用することで、写真1のようにまったくその存在に気がつかないほど見事に擬装していたのです。
ヨツハモドキが素材をどのように体にくっつけるかは、素材を取り除いた個体を水槽に入れて観察してみたいと思います。その結果は次の機会にご紹介しようと思います。
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