サーフ通信最終回 ~ごめんね、サーフ~
11月5日、昨年うまれたカマイルカのサーフが息を引き取りました。
10月ごろからお腹の張りが目立ち始め、餌を食べるとき食べないときのムラが顕著に見られました。
整腸剤を与えたり、餌の量を調整するなどして対処してきましたが、10月の下旬頃からお腹の張りの程度が大きくなり、餌を何日も食べないことが続いたことから今月の初めに裏の水槽に移して、状態を調べていました。
うまれる前からどきどきして、うまれてきてハラハラし、順調に成長している様子にわくわくしていました。
イルカの群れの中での暮らし方や行動が進歩していく様子など、観察をしたことで、カマイルカの赤ちゃんがどんな成長をしていくのか、という一例を記録することができました。
魚を自発的に食べることができるようになり、食事中のトレーニングにも取り組み、これからの成長を楽しみにしていました。
心臓の拍動が手元に感じられなくなった瞬間に抜けていった全身の力。
サーフとのいろいろな思い出がよみがえり、同時に「あれをやっておけば...」という後悔の念も頭に次々と浮かんできました。
サーフに会いに来てくださった方や名前をつけてくださった方にはほんとうに申し訳なく思っています。
飼育係は普段近くで会えない生き物と近くにいられる、お世話ができる、とっても楽しそうな夢に溢れた仕事だなぁと言われることがあります。
確かにそうですが、生き物を扱うということは、いろいろなことが日々起こっています。
例えば、体調を崩した生き物の対処はかなり神経を使いますし、動物から攻撃を受けることや、世話をしてきた生き物の死にも直面しなくてはいけません。
生き物が死んでしまうたびに、この仕事は私には合ってない、やめたいと思ってしまいます。
でも、死んだ命から得られた情報を次に同じことを繰り返さない、今後の飼育技術の発展のために役立てて行かなくてはいけないという使命感、今育てている生き物たちをしっかりと育てていかなければいけない使命感、海遊館に来てくださるみなさまに、海に生きる生命のすごさ、美しさ、不思議などを伝えて、興味を持っていただきたいという夢を思い出して踏ん張っています。
まだ、とても悲しくてなかなか立ち直れそうにありませんが、くよくよとしているわけにもいきません。
サーフを失ったことはとてもつらいことですが、サーフが残してくれたことを次の出産や子育てに生かしていきます。
まだまだよくわかっていないカマイルカの出産や子育てについて、観察・研究を続けていきたいと思っています。