アカテガニ
- 2016.09.13
- 大阪湾で出会った生き物たち
アカテガニは、海から離れた川沿いの土手や林の中などで暮らす陸棲のカニです。
しかし、夏になると河口や海岸に移動して、メスはお腹に抱えたふ化寸前の子供を水中に放ちます。
このメスの行動は放仔(ほうし)行動と呼ばれます。
8月下旬に大阪市の南港野鳥園で行われたアカテガニの放仔観察会に参加しましたのでその様子をお伝えします。
野鳥園に着いたのは18時半ごろ。
野鳥園の干潟は夕暮れどきの美しい瞬間を迎えていました。
アカテガニの放仔行動は、大潮から数日間の夜の満潮時に集中していることが分かっています。
この日の満潮は20時40分ごろ。
まだ時間がありましが、とにかくあたりが暗くなり始めたので観察に出発しました。
野鳥園の干潟周辺には林があり、この林の中にアカテガニが暮らしています。干潟に行く前にこの林の中を通ってカニの様子をうかがうことにしました。
林の中をライトで照らすと、いましたいました。
そこらじゅうでアカテガニが動いています。
干潟に出る10分ほどで百匹近く見たでしょうか。
干潟に出ると普段より潮が満ちてきているのがわかりました。
アカテガニはこの時期をねらって海へ近づくのです。
私を含め十数名の観察者がじっと息をひそめてアカテガニが来るのを待ち、やがて林から移動してきたアカテガニたちの姿を見つけました。
アカテガニのメスのお腹には、ふ化寸前の卵(正確には胚)がぎっしりついています。
しかし、なかなか海中へ入ってくれません。
やはり観察者の気配やライトの光を気にしているのでしょう。
1時間ほどねばりましたが、結局海水に少し浸かることはあっても放仔行動を見ることはできませんでした。
この写真は別の場所で撮影したものですが、アカテガニのメスが海水に浸かって体を激しく震わせている瞬間です。
この時、海中に放たれた子供はゾエアと呼ばれる幼生で、親とはずいぶん違う形をしています。
ゾエア幼生は約1ヶ月間海中を漂った後、親の形に近いメガロパ幼生に変態して岸に近づき、やがて稚カニとなって陸へと上がって行くのです。