海遊館日記

2016年9月

プロフェッショナル!

現在開催中の企画展「デスモスチルスがいた地球」が始まる少し前のお話です。

今回の企画展では古代の海獣にスポットを当て、海遊館で普段は見ることのない大きな骨格標本がたくさん展示されています。展示する標本たちは北海道、群馬から来ています。

普段骨を扱っていない私たちにとっては、貴重な標本を長距離運ぶのは難しいことです。

そこで、今回のブログに登場するのは化石や標本を運ぶプロフェッショナルの方々です!

こちらが作業の様子です。
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企画展示室すぐ近くのエレベータに乗る骨格標本はよかったのですが、問題はエレベーターに乗らない大型の骨格標本です。

どうしたものかと、プロの方々、飼育員で悩み、大きなエレベータのあるところまで移動して、ギリギリ通れる通路を探しながら、人力で運びました。

一部お客様のいる観覧通路を運ぶなど、かなり大変な作業でした。

なんとか無事に全ての骨格標本を運び入れることができ、企画展も無事オープンすることが出来ました。
多くの博物館や水族館に標本を運んだことのあるプロが「海遊館への搬入はかなり大変だった...」とつぶやいていました。

プロの技に終始感動した一日でした。

かなりの苦労がつまった骨格標本を是非見に来てください!

最後に骨たちが乗ってきた素敵なトラック☆
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パタのお月見

少し前の話にはなりますが、9月14日にラッコのパタにお月見氷をプレゼントしました。

ジャーン!!
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パタには1年を通して様々な形の氷を渡しています。

そしてこのお月見の氷が1番作るのが難しいのです。
しかしパタはそんな飼育員が頑張って作った氷に興味がなく、まさかのお月見氷を無視する始末!!!

その後の様子は動画をご覧下さい。
パタの大好きなカニを見せながら待っていると急接近してきました!!!

そして、お月見氷をよいしょ!と受け取り、氷を堪能するパタでした。

おでこ氏、がんばる

最近、物忘れが激しく、魚の名前がなかなか出ません。

「えーっと、アレがねえ~」と言って、「アレってなんですか?」
「アレよアレ、○○水槽の(特徴を言う)・・・なやつ」とかいう会話をして、みんなを困らせています。

例)「『瀬戸内海』水槽の黄色くて黒い縦の縞がいっぱいあるアレ」→カゴカキダイ、とか。
姿は思い浮かんでいるのに、名前が出てこないのです。

困ったものです。

さて、『エクアドル熱帯雨林』水槽のグリーンテラー。
やはり名前が出てこず、「ほらー、おでこのでたアレ」と言ったら、担当者はすぐにわかってくれました。
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▲この写真の個体はまだおでこは出てません。

しかし、水槽をよく見ると、このように立派なおでこの個体がいます。
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これは雄で、雄は成長すると、おでこが出てくるのです。

現在、展示はしておりませんが、メガネモチノウオ(ナポレオン)やコブダイなどと同じ! 
「おでこはシンボル」

さて、『エクアドル熱帯雨林』水槽のおでこ氏は水槽の左下で縄張りらしきものを持っていて、周りに他の魚が近づくと「来るなー!!」とお怒り。
しかし、この水槽にはたくさんの魚がいますし、時折カピバラやカメがうろうろするので、縄張りを持つのも簡単ではありません。

なので、がんばってたり、がんばってなかったり(どっちやねん!)。
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とはいえ、以前、繁殖をしたこともありますから期待したいところです。

↑この時のこどもが、今のおでこ氏たちだと思うのですが...。

アカモンガラの気になる行動

すっかり朝晩は涼しくなり、秋の訪れを感じますね。
この夏、海遊館ではいろいろな事がありました。

その中でも、私が注目したのは、生き物の繁殖行動です。
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こちらは『グレートバリアリーフ』水槽です。
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この水槽の下層を観察していると、なんとも面白い行動をしている魚がいました。

せっせと底砂を運び、掃除しているように見えるのは、アカモンガラです。
何をしているのかというと、巣を造っているのです。

自分のテリトリーに巣を造り、そこで繁殖を行います。
産卵後、卵は約1日で孵化します。

カワハギの仲間は巣を作る種が多く、当館では他種でもこのような行動がたびたび観察されます。
今回、巣は造ってはいたのですが、なにが気に入らなかったのか、残念ながら産卵には至りませんでした。

アカモンガラに気に入ってもらえるよう、水槽の底を改良しようと考えています!

敬老の日"水鳥編"

私が担当している生き物には、コツメカワウソのおじいさんコンビ以外にも敬老の日を祝う生き物がいます。

それは...
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"日本の森"にいるゴイサギです。
ゴイサギは夜行性で、鳴き声がカラスみたいなので、『夜ガラス』なんて呼ばれたりしてます。

かっこいいですよね。

ゴイサギは海遊館オープン当初からいる大ベテラン。
「ゴイじい(オスと思われます)」にもドジョウをプレゼントしました。

中央のやや左下の木の枝にある容器にご注目!
「あっ...」
ツルッとあっさり、いっちゃいましたね...。

ちょっと残念。

また準備するので、元気に過ごしてね。

お稚児さん?

 「日本海溝」水槽のチゴダラ。
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タラの仲間で、タラより小さめだから、「チゴダラ」だそうです。
「小さい」=「稚児」とは、風流ですね。

チゴダラの腹部に発光器があります、といってもピカピカひかっているわけではありません。
アクリルガラスの前でお腹を見せて泳いでいることが多いので、発光器を確認できますよ。

それよりも、ひげマニアの私としては、たいへんぬかっていたことに気づきました。
タラの仲間なので、チゴダラの下顎にもひげがあるのです。
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ほら、小さく1本、ぴーんと。
お稚児さんにひげはふさわしくないかもしれませんけど...。

電動台車の修理

今日のお仕事は「電動台車の修理」です。

生き物たちの餌(冷凍餌)は定期的に1階から8階の冷凍庫まで運びます。
一回に運ぶ重さは数百キロにもなるため、重い荷物でも運ぶことができる電動台車があります。
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今回、修理する電動台車です。一見普通ですが。
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車輪が大変なことになっています。
樹脂製タイヤ(オレンジの部分)が経年劣化でボロボロ、無理に引きずったので削れて平らになっています。
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交換用のホイールも入手できたので古いホイールを外します。
硬くはまっているのでギアプーラーなるものを使って外します。
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新旧のホイールです。
電動台車にも流行があるのでしょうか?
ホイールがデッシュタイプからスポークタイプに代わっています。
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完成!
その他、バッテリーやベアリングも交換しておきました。
これでまた、20年は使えそうです?

敬老の日"コツメカワウソ編"

9月19日は敬老の日でした。

コツメカワウソのニッキ(22歳)とオリーブ(17歳)は、現在、国内最高齢の親子です。
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こどもや孫、はてはひ孫まで日本各地にいるニッキとオリーブ。
コツメカワウソの繁殖は雄次第といってもいいかもしれません。

なので、そんな"偉大な"じいさんコンビには、ドジョウをプレゼントしました。
僕が早起きして鮮魚の卸売市場へ買いに行った品なので、とても新鮮!
15cmぐらいの良型です!

そんな食べ応え満点!のドジョウをプレゼントした時の様子がこちら

2頭とも大興奮!

僕たち担当も大興奮でした!
まだまだ元気な2頭でした♪

おさかなペーパーキャップを作ろう!

みなさま連休はどうお過ごしになられましたか?

お出かけされた方、おうちでゆっくりされた方、仕事でした・・・という方(私もです!)

色々いらっしゃったかと思います。

海遊館では「おさかなペーパーキャップを作ろう!」を開催しました。
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ペーパーキャップは、ジンベエザメ・カクレクマノミ・ナンヨウハギの3種類!
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当日はたくさんの方が参加してくださいました。
1枚の紙で平らな状態から徐々に立体に作り上げていきます!

難しそう~とお思いの方、ご安心ください。スタッフが丁寧にサポートします!
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完成!めちゃくちゃかわいい~!

3日間で、たくさんの子供たちのかわいい笑顔に出会いました♪

「おさかなペーパーキャップをつくろう!」は9月22日(木祝)・24日(土)・25日(日)とあと3回。
お休みどこ行こうかな~と迷っていらっしゃる方はぜひ「秋ラボ海遊館」にお越しください♪

大阪湾のスナメリのことを知りたい。

連絡を受けて、海岸に打ちあがったスナメリの対応を行いました。
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今回の事例のように、スナメリなどの死亡した生物が漂着した場合、どうするの?って気になりますよね?

海遊館に一度持ち帰り、解剖をします。外からは見ることができない内臓を観察できるからです。
私たち飼育員は動物の死を目の当たりにすることがありますが、頻繁に起こることではないため、スナメリのことを知り勉強になります。

また、どこかに病気がないかとか、骨折はしていないかとか、死因を調べます。
皮膚が残っていれば、遺伝子検査を行って、どの地域に由来するスナメリなのかを知ることができます。
胃の中に魚の骨やイカのカラストンビなどが入っていれば食べ物がわかります。
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違う2個体で胃の中に入っているものが全く違う!何でだろう!!!????

死亡して打ちあがったスナメリは、ほぼ100%腐敗が進んでいて、見るに耐えないし大変くさい!
今日も死因を調べるために解剖しましたが、廊下はすごい匂いになりました。同僚たちは近寄ってこない。
なんかさびしいなぁと思いつつ、まだまだまだまだわからないことだらけの大阪湾のスナメリ。

このスナメリ臭に耐えながら、大阪湾のスナメリのことを明らかにしていきたいです。

ジェンツーペンギンの巣立ち

今年7月、南極大陸水槽で生まれた3羽のジェンツーペンギンの雛たちは、巣立ちを迎えました。
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見た目も泳ぎも一人前です。
この頃から、飼育係員の手から餌が食べれるよう練習が始まります。
雛の性格によって、練習の進み具合は異なりますが、今年は何日ぐらいかかるんでしょうか。
その報告はまた別の機会に・・・


外見だけで、子供を見つけるのは至難の業ですが、両翼に装着したバンドをチェックすれば一目瞭然!
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3羽の子供を探してみて下さい!

まねっこミッチ

ある日のお食事タイム中。
バックヤードで暮らしているミッチがとてもお茶目だったので、
思わず写真をパシャリ☆
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よーく見てみてください。
「はーい」と右足を上げているホタルの後ろで
先に食べ終わってお部屋に戻っていたミッチがホタルの真似をしていたのです!!
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お口だって全開に開けちゃっています...。

ホタルの真似をするお茶目なミッチなのでした~♪

朝のトラフザメ

ある日の朝のトラフザメ。
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寄り添っていそうで寄り添っていなーーい!
仲良く寄り添う写真取れればブログに使えるのにとがっかりした飼育係。

その後もう一度「太平洋」水槽をのぞいてみると、、、
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なんと水槽の真ん中で寄り添ってるー!!!
これはチャンスと思いパシャリ♪

実はこのトラフザメ達寄り添っている姿をよく見かけるのですが、いつも端っこにいる為、なかなか良い写真が取れずにいました。
が!良い写真をとることができました~!!
嬉しくなったのでもう少しアップにしてパシャリ。
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左の小さくて白い方が雄で、右の大きい方が雌なんですよ。

「恋に発展してくれたらいいなぁ」なんて思う飼育係でした。

6月14日生まれのカリフォルニアアシカの愛称が決定しました!

 6月14日に生まれたカリフォルニアアシカの愛称決定しました!
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今年の6月14日に生まれたカリフォルニアアシカの愛称が
「ナギ」
(意味:凪のように穏やかに育ってほしいということと、母獣が「ナミ(波)」であるのに対して「ナギ(凪)」という意味からです)
に決定いたしました。
生まれた直後は、「ナミ」といることが多かったのですが、最近では1歳年上の「しずく」や2歳年上の「レオ」と一緒に、子どもアシカ3頭で遊ぶ姿なんかも見ることができます(飼育員からの距離は遠めですが・・・)!
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(どちらも左から「しずく」「ナギ」「レオ」です)
それでも、やっぱりお母さんの「ナミ」がいいようです。
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すくすくと育つよう、応援お願いいたします!
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「なるほどー」ってなる場所 ~サメとエイの見分け方~

の夏も例年通り、土日にナイトツアーを実施していました。
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ナイトツアーは閉館後の海遊館を飼育係が解説しながら案内するツアーなわけですが、飼育係も様々で、海獣担当者は海獣の話を、魚類担当者は魚類の話を、中でも自分の担当生物を中心にお話します。

皆様と一緒に水槽を回っていく過程で、前半は海獣水槽が集中することから、海獣担当者は前半にいっぱいお話ししますし、魚類担当者はどっちかというと「グレートバリアリーフ」水槽、「太平洋」水槽以降にたくさんしゃべりたい!という傾向にあります。
とはいうものの、飼育係はけっこうしゃべるのが好きな人が多く、前半も後半もたくさんしゃべりまくっているかもしれませんが(笑)。

ちなみに夜の見学はおとまりスクールでも実施しています。
夜の見学で楽しいひとときを過ごしつつ、「太平洋」水槽の底に到達する頃には、さすがにお客様も歩き疲れ、聞き疲れ?してらっしゃいます。

しかし、ここで見ていただきたい、聞いていただきたいのが、『サメとエイの見分け方』です。
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なんせ、横を見ると、サメとエイがわんさかいるのですから、実物を見て確認しない手はありません。

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ポイントはエラの位置!

サメはアカシュモクザメに登場願いました。
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エラは体の横にありますね。

では、エイはどうでしょう?
ホシエイさん、よろしくっ!
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この通り体の腹側にあります。

ではでは、名前に「サメ」とついているシノノメサカタザメはどうですか?
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体の横にはエラがありません、だからエイの仲間ですよ。

じゃあ、この縦列で泳いでいるジャイアントシャベルノーズさんはいかが?
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こちらも体の横にエラがないので、エイの仲間。
体の形はサメのようなのにエイなんですねー!
(本当はジャイアントシャベルノーズレイ、レイ=エイなので、ごめんなさい、ちょっとずるをしました)
というように、ここはお客様には実物を見て、なるほどーと思っていただける場所なのです。
歩きつかれた人もここで再度テンションアップー!

あと、こちらも実物と比べると更に楽しいです。
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ナイトツアーやおとまりスクールでなくても、皆様にご覧いただける場所ですので、特に夜にご来館の際はぜひぜひ観察してみてくださいね。

はやりの...

このところ海遊館周辺では、特に夜になると人がいっぱい。
・・・というのも、あの有名なゲームの聖地になっているからです。飼育係員も、この流行のゲームをしている者が多いです(もちろん仕事中ではありません)。そういう私も「試しにー」と言いつつ、しっかりやっています。

それにしても、このゲームの中に出てくるキャラクターには、動物由来のものが多いですねー。
30歳代前後の飼育係員は、このキャラクターたちの出てくるTV番組を見ていたり、ゲームをしていたようで、私が「○○が獲れたー」と言うと「それは△△ですね!□□由来の生き物で...」と詳しく説明してくれます(笑)。

ざーっと見ても、海や川にくらす生き物系では、カメやコイ、ジュゴン、クラゲ、貝、カニ、オタマジャクシ、カエル、ヒトデ、タツノオトシゴ、金魚、カブトガニ、ヤドカリなど、はてはアンモナイト、カッパ、リュウなど。
それぞれ、絵やキャラクターがかわいいです。そしてネコや茶色い生き物が好きな私は、ついついそれらが出現すると、獲りたくなってしまうのでした。

ところで、ゲーム中に伝説の生物・ユニコーンを元にしたキャラクターがいるわけですが、実は「グレートバリアリーフ」水槽にもユニコーンにちなんだ魚がいます。
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▲その名はテングハギ!

頭の上方にツノがあるため、英名はユニコーンフィッシュです。
日本ではこのツノが天狗に見立てられているところがおもしろい。

また、新体感エリアにあるこちらのレプリカも「ユニコーン」と呼ばれています。
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北極海に暮らすクジラの仲間、イッカクです。
このツノは牙が変化したものですが、テングハギのツノはなんのためにあるのかはまだわかってないようです。
ただ、幼魚にはツノはなく、成長とともにツノがのびてくるってことで、第二性徴のようなのものなかしら?

暑さに疲れたら、涼しい館内でゲームにちなんだ生き物探しはいかがですか?
ただ、歩きスマホは危険なので、ご遠慮いただきますようにお願い申し上げます。

ワモンアザラシ・ユキの新技

ワモンアザラシのユキが新しい技ができるようになりました!
それがコチラ!!!
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『敬礼』です!
アシカに比べて前肢が短いのでアシカの敬礼とまではいきませんが
しっかり敬礼をしてくれます。
もっとみたいという方のために動画もどうぞ!

今ユキは敬礼が一番のお気に入りです。
ワモンアザラシのお食事タイム時にご覧いただけますので
かわいらしいユキの敬礼を見に来てくださいね!

アカテガニ

アカテガニは、海から離れた川沿いの土手や林の中などで暮らす陸棲のカニです。
しかし、夏になると河口や海岸に移動して、メスはお腹に抱えたふ化寸前の子供を水中に放ちます。
このメスの行動は放仔(ほうし)行動と呼ばれます。
8月下旬に大阪市の南港野鳥園で行われたアカテガニの放仔観察会に参加しましたのでその様子をお伝えします。

野鳥園に着いたのは18時半ごろ。
野鳥園の干潟は夕暮れどきの美しい瞬間を迎えていました。
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アカテガニの放仔行動は、大潮から数日間の夜の満潮時に集中していることが分かっています。
この日の満潮は20時40分ごろ。
まだ時間がありましが、とにかくあたりが暗くなり始めたので観察に出発しました。
野鳥園の干潟周辺には林があり、この林の中にアカテガニが暮らしています。干潟に行く前にこの林の中を通ってカニの様子をうかがうことにしました。
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林の中をライトで照らすと、いましたいました。
そこらじゅうでアカテガニが動いています。
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干潟に出る10分ほどで百匹近く見たでしょうか。
干潟に出ると普段より潮が満ちてきているのがわかりました。
アカテガニはこの時期をねらって海へ近づくのです。
私を含め十数名の観察者がじっと息をひそめてアカテガニが来るのを待ち、やがて林から移動してきたアカテガニたちの姿を見つけました。
アカテガニのメスのお腹には、ふ化寸前の卵(正確には胚)がぎっしりついています。
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しかし、なかなか海中へ入ってくれません。
やはり観察者の気配やライトの光を気にしているのでしょう。
1時間ほどねばりましたが、結局海水に少し浸かることはあっても放仔行動を見ることはできませんでした。
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この写真は別の場所で撮影したものですが、アカテガニのメスが海水に浸かって体を激しく震わせている瞬間です。
この時、海中に放たれた子供はゾエアと呼ばれる幼生で、親とはずいぶん違う形をしています。
ゾエア幼生は約1ヶ月間海中を漂った後、親の形に近いメガロパ幼生に変態して岸に近づき、やがて稚カニとなって陸へと上がって行くのです。




水分補給(その3)

水分補給(その1)と(その2)では、皮下輸液による水分補給を紹介しました。
でも、これだけでは充分ではありません。
輸液以外で水分をなんとか補給できないかなーと冷蔵庫を見ていたら、タッパー容器に入ったものがふと目にとまりました。
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▲写真の右:これはゼラチンをかためたもので、カマイルカに与えています。

海生哺乳類(イルカやアシカなど)は、水分を餌から吸収しますが、冷凍した魚を餌に与えると水分が不足ぎみ。以前は魚の腹腔(お腹)に注射器で水を入れていたのですが、近年は水をゼラチンで固めて与えています。

イルカ担当者に、この水分補給ゼラチンのかけらをもらって、カピバラ・ぴーたんやカワウソ・オリーブに与えましたが、「なんじゃ、これは!」と触りもしない...。
よく考えたら、イルカは餌を丸呑みするので、サバなどと一緒にゼラチンを口内に入れることが可能ですが、餌をくちゃくちゃと咀嚼する生物ではそう簡単にいかないのです。

でも、あきらめないのが飼育係員。
ぴーたん用に、コマツナやチンゲン菜をジュースにして、草食性なので、ゼラチンではなく寒天でつくってみました。(写真1の左)
自分でもひとくち食べてみたところ「うーん、コマツナ!」って感じ。
そのまま与えると「ふんっ」と知らんぷり。
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チンゲン菜の葉やキャベツにくるむと...。
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食べたー!
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でも、口から少しこぼれてるような...。

オリーブにも何か・・・と考えて、水分補給用ゼラチンを普段よりやわらかめにつくり、注射器で吸い込み・・・。
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これをニジマスの腹部に充てんします。
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これは、オリーブも食べてくれました。ただし、ちょっとでも形がくずれて、ゼラチンがはみでてたら嫌がります。
ちょっとぐらい許してーや!

魚の腹腔に入れるのなら、水でいいじゃん!と思うでしょう?
でも、一口かんだら、じゃーって流れていってしまうんです。
ゼラチンにしても、寒天にしても、スムーズに食べてくれたら、薬も混ぜやすいので一石二鳥なのになあ。

そんなこんなで水分補給に悩む夏なのでした。 早く涼しくなってくださーい!

水分補給(その2)

先日18歳の誕生日を迎えたコツメカワウソ・オリーブ。コツメカワウソ界では、ご長寿の部類に入ります。
7月下旬から嘔吐が見られ体重が減少していたので検査をすると、血糖値の低下がみられました。糖尿病を疑いましたが、一時的なものだったよう・・・。
お薬を与えると嘔吐が止まり、よくなったのかなーと餌の量を増やすと嘔吐、というのを繰り返していました。

嘔吐すると脱水が心配なので輸液を行うのですが、逆転の発想で、嘔吐する前に輸液したらどうか?よーし、3日に一度、皮下輸液しよう!ということになりました。
結果、8月上旬から嘔吐が止まり体重も回復しました!!
オリーブは、自らとことこ水場に行って飲水しているのですが、どうやら足りていなかったんだなあと実感しました。

▼オリーブの輸液はこうです。
①まずはケージに入ってもらい、動かないように保定します。
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②獣医が背中の皮下にちゅーっと30ccほど輸液。
カワウソはカピバラと異なり、皮の下にたるみが多いので、輸液はしやすいです。
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給餌中に輸液することも可能ですが、餌と輸液が結びつき、餌を食べなくなるのは非常に困ります。
というのも、オリーブは体調を崩してから、カワウソに与えている餌のうち、小さいニジマスしか食べないのです。
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食べてくれそうな餌はないかと、いろいろ探したのですが、なかなか「これは当たり!」というものがありません。
オリーブの父親、ニッキは餌への選り好みがないのに、オリーブは偏食です!
オリーブの保定について「かわいそう」と思われるかもしれませんが、暴れることもなく、輸液終了後にはすぐに餌をぱくぱく食べています。
本人?もこれ我慢したら、楽だよと思っていてくれたらうれしいんですけど。
次回は水分補給(その3)をお伝えします。

水分補給(その1)

この夏は猛暑続きで、本当に大変でしたね。
皆様も涼んだり、適度な水分補給を行いつつ、過ごされたことと思います。
海遊館の生き物たちも、水分が不足しないよう、特に高齢の動物たちは特別に観察しています。

今年、8歳になった「エクアドル熱帯雨林」水槽のカピバラ・ぴーたん。カピバラ界では高齢の部類に入ります。
8月中旬より少し体調をくずしていましたので、お薬を与えたり、脱水にならないよう、水分補給のための皮下輸液を行ったりしました。
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血液中に液を入れるのは時間がかかるため、なるべく短時間で実施できるように皮膚の下に液を入れます。
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カピバラの場合は太ももの付け根に入れるのですが、ぴーたんが座って餌をもしゃもしゃ食べている間に、そっと注射針を刺し、針がはずれないよう、ぴーたんの近くで様子を見ます。
液が皮下に入ると、ぷくーっとふくれてきますが、しばらくすると吸収されて、水分補給されるのです。
もう1人の飼育係員が展示槽の上で輸液のパックを持ち、ぎゅーぎゅー押して、液を流します。
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安定の悪い場所なので、すべて人力で行います。
2名の飼育係員は、針や輸液パックが外れてしまわないように、ぴーたんが動けば一緒に動きます。
150ccほど補液するのに、約20分かかります。
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補液の後は、「よく我慢したね」と好きな餌を与えます。
入れた水分の量は100~150㏄で、ぴーたんの体重からするともう少し多い方がよいのですが、嫌がる前に止めているので、これから徐々増やすことができればと思っています。
次回は、水分補給(その2)をお伝えします。

仲良しなの?

企画展「デスモスチルスのいた地球」で展示しているメキシコサラマンダー。
普段は2匹がそれぞれ、水槽の中の別々の場所に陣取っています。
しかし、ある日水槽をふとみると・・・、
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仲良く並んで隠れ家の中に?!
本当は仲良しなんかな?

コツメカワウソの誕生日"わんぱくフォー編"

コツメカワウソの誕生日ラッシュの最後を飾るのは、8月29日生まれのこの方たち!
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"わんぱくフォー"ことイガ、ニラ、ザクロ、シュロの4兄弟です!(左奥からイガ、左手前ニラ→ザクロ→シュロの順です)
今年で7歳!
最近は飼育員の足を噛む事がなくなり立派になりました!
ザクロはこっそり後ろから狙ってくることがありますが(笑)。
この4頭にはおもいっきり遊んでもらおうと用意したプレゼントは
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伊勢えびの脱皮殻とハートの形の氷(中にはエビが入っています)
誕生日おめでとーう!
伊勢えびで遊んでいるのは、ニラ
続いてシュロ
カミカミしているザクロ
最後はイガ
楽しそうでよかったです。
そろそろ展示に戻れそうです、お楽しみに!

コツメカワウソの誕生日"ヤット編"

ニッキ、オリーブに続いて、8月22日はコツメカワウソの"ヤット"の誕生日でした
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ヤットが喜ぶものを!と考えていると、全員がまず頭に浮かんだものは...『食べもの』でした(笑)
ヤットは海遊館にいるカワウソの中で1番体が大きく、たくさん食べます。
そんな食欲モリモリのヤットの誕生日プレゼントは、楽しく食べることができるものという事で氷の中にエサを入れたものと、エサを重ねて凍らしたミルフィーユのようなものを作りました。
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(ツバキの誕生日以降、ぼくの中で氷ブームが来ています)
こちらがプレゼントを渡したときの様子です。
楽しんでいるかわかりませんが、いつもどおり貰ったエサを食べるだけじゃなく
自分で溶かしたりと工夫をしないといけないので、氷のエサはおもしろいですね!
ヤット、誕生日おめでとう!
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最近の、謎のアシカ、ミッチ

バックヤードで暮らすアシカ、「ミッチ」
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最近覚えたのが、これ!
伏せして高速その場回転!(ネーミングセンスがない!(笑))
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まだまだ伸び盛りのミッチ、どんなトレーニングしていこうかなぁっと考えるのが
とっても楽しいんです!

アシカキッズと土管

先日、「モンタレー湾」水槽で使用している消防ホースのおもちゃを紹介しましたが、今回は別のおもちゃを紹介します!
それがこちら!
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その名も土管(どかん)!!
この土管は中の空気を抜くことにより、水中で漂うことができます。
そのため、水中でも好きな場所へ持って行くなど自由自在に遊べるんです♪
そして特にこのおもちゃを好きなのが、カリフォルニアアシカのレオです!

最初に遊んでいるのはしずくで、途中からやって来たのがレオです!
2頭で仲良く土管を押し合って遊んでいます♪
しかし、しずくが少し離れた途端にレオが土管を抱きかかえます!!
さらに自分の物だとアピールするかのように目の前を通っていきました!
通る途中、チラッとこちらを向いていたのは気付きましたか?
その時のレオの表情を切り取ってみると...
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こんな感じで満足げでした!
この後は、再びしずくと合流して楽しそうにずーっと遊んでいました♪
今年生まれた赤ちゃんアシカは少し離れたところで見ていたので、いつか3頭一緒に遊んでいる姿が見れるかもしれませんね(^^)

ラッコのパタの苦手なこと

今日はラッコのパタの苦手なこと?ひと?を紹介します。

パタは6月28日に20歳になってから、かなり食欲も上がりエサもモリモリと食べてくれていました。
しかしここ数日前にお腹をくだしてしまったのか、少し元気が無くなっていたのです。

そんなところに現れたのがブログでもお馴染みメガネの獣医さんです。
パタはメガネの獣医さんを見ると怒ってしまうのです。。。。

獣医さんはパタの体調に少しでも変化があるといつも駆けつけてくれます。
採血をしたり、薬を出してくれたりと救世主なのです。
しかしパタからすると「次はあたしに何しに来たのよ!!」とプールへ帰ったり口を開けて怒ったり。。。笑

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これは獣医さんが注射を打ってくれている様子。パタの顔がぶれてしまいすみません。

すぐに体調は回復し、今はエサの時間が待ち遠しいのかドアの前で待っていたりします。
獣医さんがパタと仲直り?をするために、パタの大好物のゲソを渡しました。

パタの嫌なもの2.JPG
獣医さんはこんな笑顔で楽しそうですが、パタは獣医さんとちゃんと仲直りは出来たかな???



アカメ展示デビュー

「瀬戸内海」水槽に新しい魚がデビューしました!

でーーーーんっ!!
20160902.JPG
アカメです。
アカメは全長1m強になる日本固有種の魚です。
名前の通り赤色の目をしていますが、写真ではうまく撮れませんでした・・・。
アカメといえば、宮崎県や高知県にいるイメージが強いかと思いますが、実は瀬戸内海でも水揚げされることがあるんですよ。

そんなアカメが餌を食べるところを動画で撮ってみました。

どうですか?餌を丸ごと食べる姿は迫力がありますね!
現在、様子を見ながら餌を与えています。もし、アカメがそわそわしていたら?(そわそわって・・・?)、お食事シーンが近いかもしれません・・・?

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