海遊館日記

心に誓う日になりました。

先日、今シーズン3羽目の雛が誕生しました。
ジェンツーペンギンです。

ジェンツーペンギンは、通常、産卵後35~40日で孵化します。
ある一定の日数を過ぎた頃、特殊な機械を使うと、卵の中で生きている雛の心音が聞こえます。

元気に生まれて来いよー!と祈り続ける毎日。

しかし、36日目。卵に変化なし・・・37日目・・・38日目・・・卵に変化がありません。
何か様子がおかしい。

そして39日目の朝、やはり変化はありません。
獣医師と相談した結果、人工的に孵化させる処置をしよう!ということになりました。

過去に海遊館では、孵化に時間がかかっている卵に対し、手伝う程度の処置しか成功例がありません。
今回は、孵化が一切始まっていない卵に対する処置。リスクの大きさや難易度は桁違いです。

奇跡が起きることを信じて、処置を開始。


まずは雛を傷つけないよう気室側から少し殻を割り、中の状態を確認しました。

2014g3-1.JPG

よしっ!ちゃんと生きてる!
がんばれ!

次は卵膜を破ります。

2014g3-2.JPG

よしっ!!ちゃんと肺呼吸しとる!もうちょいや!
この時はじめて雛の鳴き声を聞き、ちょっと安心。

でも試練はまだまだ続きます。

雛は十分成長しているか・・・、孵化前に吸収されるはずの栄養が残っていないか・・・などなど。
いろんな不安が頭をよぎるなか、少しづつ少しづつ1日かけて処置を進めました。

そしてついに夕方、がんばって生き続けた雛の生命力と獣医師の手助けにより、無事、孵化させることに成功しました!!

2014g3-3.jpg

あぁ~よかった。

今回、正常に孵化しなかった理由は分かりません。
もしかすると雛に何らかの異常があるのかも知れません。

何とか孵化させることが出来ましたが、これから先、状態が急変したり、正常に成長させられない可能性も十分あります。
そのため、飼育係員が親代わりとなり、成長の状態を観察しました。

そして次は、私たち飼育係員が頑張る番です。
まだまだ不安な日の連続ですが、絶対に諦めることなく、出来ることを精一杯したいと誓いました。

2014g3-4.jpg

毎日早朝~夜中まで、3時間おきに餌を与えました。

海遊館で人工育雛で生育させた雛はたくさんいます。
しかし、今回の雛は餌への要求が上がってきません。なんでやろ・・・

数日後、雛の呼吸に異変が現れました。原因不明の呼吸障害でした。
それでも、できることを精一杯しました。

生まれて11日目の早朝、残念な結果となってしまいました。

検査の結果、死亡原因は肺水腫。おそらく心不全から併発したのではないかとのこと。

なぜ心不全を起こしたのか、先天的な異常だったのか、飼育方法に誤りがあったのか、助けられる手段はなかったのか、もっと早期に気づくことはできなかったのか・・・。生き物の「死」には、考えさせられることがたくさんあります。

あらためて、飼育技術や知識、観察力を高め続けなければいけないと、心に誓う日になりました。
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