ニホンカワウソについて
8月28日、環境省の第4次レッドリストにより、ニホンカワウソが絶滅したと公表されました。
北海道に暮らしていた亜種は1950年代、本州以南に暮らしていた亜種は1990年代に絶滅したであろうとのことです。
(環境省のホームページ)
カワウソの仲間は世界中に13種類います。海遊館で飼育展示しているのは、東南アジアに生息しているコツメカワウソ(ツメナシカワウソ属)という種類で、ニホンカワウソ(カワウソ属)とは属のレベルで異なります。コツメカワウソは爪が小さいこと、体が小さいこと、家族で生活することなど、外見や生態に異なる部分もありますが、"カワウソが暮らす「日本の森」の様子"を紹介するために、コツメカワウソの展示を行ってきました。
1990年の開館以来、機会がある度に、ニホンカワウソについてお話をしてきましたが、「カワウソ」という名前に対してお客様が反応してくださるようになったのは、ここ数年のことです。以前は、「ラッコやアザラシのこども?」とまちがえられたり、「イタチの仲間ですよ」と紹介しても、あまりピンとこないようでした。「カワウソ」が有名になったのは、テレビ番組に出演したコツメカワウソの影響が多いように思われます。もしかしたら、コツメカワウソとニホンカワウソを混同されている方もおられるのではないでしょうか?
海遊館は、ニホンカワウソが最後に見られた高知県とご縁があります。高知県土佐清水市の以布利(いぶり)という所に、海洋生物の研究所を置かせてもらい、ジンベエザメなどの調査研究を行っているからです。
今から10年程前になりますが「カワウソ・スクール」を開催するため、以布利の方にニホンカワウソについてお話をうかがったことがあります。漁師さんのお話では、カワウソには2タイプあり、海辺にいてカニなどを食べるものと、山にいるものがいて、海辺にいるものは山のものより大きく、色も違っていたとのことでした。海辺にいる方のカワウソは、漁師さんが沖合に仕掛けている定置網まで泳いで魚を取り、なかには網に絡まって絶命していたこともあったそうです。
四国に棲んでいたニホンカワウソは、海で魚を獲る習性があったと本で読んだことがあったのですが、まさにその通りで驚きました。地元では、カワウソたちの糞もよく見たし、家のそばで捕まえたこともあるけれど、お話をうかがった当時で「30~40年以上も前のことだなあ~」とのことでした。以布利では、1970年~1980年代にニホンカワウソの姿が見られなくなってしまったと思われます。
また、2008年に開催した特別企画展示「ふしぎスコープ カワウソのひみつ」では、土佐清水市役所より貴重なニホンカワウソの剥製をお借りしました。このニホンカワウソの剥製は、雄の若獣とのことですが、市役所にも資料が残っていないため詳しい来歴はわからないとのことでした。
残念ながら、ニホンカワウソはこのような結果になってしまいましたが、私たちはニホンカワウソという生き物がいたことや、ニホンカワウソがなぜこのような道を進まねばならなかったのかを語り継がなければと思っています。
(参考画像)
須崎市 鍋島氏撮影(1979年)
土佐清水市役所からお借りした「ニホンカワウソの剥製」
特別企画展示「ふしぎスコープ カワウソのふしぎ」(2008)の展示の様子